初恋 二度目の恋…最後の恋
「畏まりました。では、後少しだけ。明後日は後ほど時間の連絡をお願い致します」


 高見主任は約束の20分だけ時間を掛けての説明をすると、社長の身体は前に乗り出してくる。そのくらい高見主任の営業トークは面白い。自社の商品がいいのは当たり前。自信満々にその商品価値を伝えるとともに、その商品を購入した後の業績の向上についても触れる。そんな話を続けながらも、


 最後には余韻を残してから話を締めた。


 既取引先ではこんな営業はしないだろう。新規だから、次の約束を反故にされないように、幾つも保険を掛けていく。商品の内容もサラリと触れただけ。業績向上もサラリと触れただけ。後、もう少し聞きたいというところで躱すように話を締める。


 そんな緻密な営業力に私は目の前にいる社長と同じように聞き惚れていた。これが本社営業一課の実力なのだと思い知る。高見主任と社長の立場は完全に逆転の様相を呈していて、最初の億劫そうな社長の姿はどこにもない。


「今度は詳しい資料を持って持ってきて欲しい」


 そんな射鵰の言葉を引き出してから、応接室を出ると、高見主任はフッと息を吐く。そして、私に向かって煌めく笑顔を向けるのだった。


「遅くなったけど食事にいこうか」


「はい」



 高見主任は車に乗り込むと何が可笑しかったのかクスクス笑いだした。


 
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