初恋 二度目の恋…最後の恋
 微笑みに感じる強さが頼もしく、折戸さんの魅力を倍増させる。


 漲る自信が折戸さんを支えているように見える。メタリックのアタッシュケースを下げて歩く折戸さんは一段と魅力的だと思ってしまう。前を行く背中を見つめながら歩くと、姿勢の良さと歩き方の綺麗さが目に入る。


 今日は高見主任以外の人との最初の同行。緊張しているのは嘘じゃない。でも、緊張する気持ちを押しつぶし、私はここにいる。前を歩く優しい人の手伝いが出来ればと思う。少しでも役に立ちたいと思う。


 強さを体に纏いながら歩く折戸さんは優しいだけでない、やはり営業一課の人だった。周りの空気を変えるほどの存在感を放ちながら歩いていく。玄関の自動ドアの前に立ち、折戸さんは振り返ると私に穏やかに微笑んだ。


「坂上ちゃん。俺の足りないところの説明は頼むね。ここの契約は絶対に取りたい。でも、妥協はしない」


「はい。お役に立てるかわかりませんが、よろしくお願いします」


 私がそういうと折戸さんはもう一度ニッコリ笑ってから自動ドアの前に立つとスーッと開く。目の前に広がる天井の高いロビーを歩きながら、静かな空間を切り裂くように折戸さんは斜めに横切る。


 逞しく広い背中は優しさと強さで満ちている気がした。


 私には力はない。
 だけど、今までの培ってきた研究が少しでも役に立てればいいと心から思う。

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