初恋 二度目の恋…最後の恋
 実際に泣きはしなかったけど、とっても不安だった。研究所という閉じられた空間で仕事をしてきた私が本社営業一課に行って何が出来るのだろうかと思ったし、役に立たないと思っていた



 本社営業一課というのは敷居が高い。


 それでも今まで二週間をやって来れたのは高見主任がいてくれたから。


 高見主任と同行したことがとてもいい勉強になっている。自社の商品の開発はしても、どのように使われるのかは考えたこともなかった。でも、営業の現場に出たことでどのように開発した商品が思われているのかが分かったのは本当によかったと思う。


 これが研究所の中にいたら何も分からないまま、研究をしていたと思う。


「最初はこれからどうなるんだろうって思っていました。でも、今は、いい経験をさせて貰っていると思ってます」


「いいな。その前向きなところ。真面目で前向きなところが坂上ちゃんのいいところだね。で、明日暇?」


「え。特に用事はないですけど。」


「あのさ、明日一緒に出掛けない?」


 そう言いながら折戸さんは熱々の小饅包の口に入れる。優雅に食べながら綺麗な笑顔を私に向け、お誘いの言葉を口にする。


「仕事にですか?」


「休みに仕事はしないよ。せっかくの土曜日だし、パッと遊びに行こうよ」



 どう答えていいかわからない。行くべきなのか行かない方がいいのか?男の人と一緒に出掛ける?


 折戸さんと出掛けるのは嫌じゃない。
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