初恋 二度目の恋…最後の恋
「じゃ、約束。午前11時に駅前のカフェで待っている。遅れそうになったらメールをしてくれたらいいから」


「はい」


 その後、高見主任と同行していた時のように一緒に会社に戻ると、パソコンに打ち込みをしていく。打ち込みをしながら、ふと、さっきの折戸さんの言葉を反芻してしまう。


『絶対楽しいよ。保障する。だから一緒に行こうよ』


 楽しいだろうけど、緊張してしまう方が多い気がした。



 約束の土曜の朝はいつもよりも早く目が覚めた。


 起きて一番最初に思ったのは『どうしよう』ということ。


 私は正直困っている。


 今まで、男の人と出掛けたことなんかないし、何を着ていけばいいのかも、どうすればいいのかもわからない。
さすがに毎日仕事で着る黒のスーツを着るわけにもいかない。


 クローゼットの中は少しの実用的な服しか入ってない。おしゃれをしていくとかというよりも一緒に歩いて折戸さんが恥ずかしくないようにしないと申し訳ないという気持ちが強い。


 つい頷いてしまった昨日の自分を恨みたくなる。
 

 いつもは結んでいる髪の毛を解き、背中に流すと、シンプルなブラウスに茶色のロングスカートを身に着けた。真っ直ぐな髪はただ研究をしている時は面倒だからと伸ばしていただけ。おしゃれには程遠い。


 流行の洋服は苦手で綺麗な花柄も明るい色合いの服も着たことがない私だった。

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