初恋 二度目の恋…最後の恋
「本屋は休みの時にゆっくり行きたい気持ちはわかる。で、坂上ちゃんとここで会ったって感じ?」


「そうです。坂上さんが居たから声を掛けたんですが、一緒に出掛ける相手が折戸さんとは思いませんでした。どこに行くんです」


「どこだと思う?」


 私がそれを聞きたいと思った。私がまだどこに行くか知らない。出掛ける約束はしたけど…。でも、本当に今日はどこに行くのだろう。


 小林さんは少し考えるような表情をし、すぐに無邪気な微笑みを向ける。


「そうですね。折戸さんの思考回路からすると…。遊園地ですか?」


「いや違うね。動物園だよ」


 遊園地という小林さんの思考もおかしいけど、動物園という折戸さんも可笑しい。



「うわっ。動物園だとは思わなかった」


「冗談に決まっているだろ。いい年した大人が動物園なんか行くかよ」



 余りに真面目な声でいうから騙されてしまった。折戸さんはそんなことを言いながら無邪気に笑った。折戸さんの真面目な顔でいう冗談で肩の力が抜ける。



「蒼空も暇なら一緒に行かないか?」

「は?」

「どうせ家に帰るだけなら付き合えよ。今からドライブに行くぞ」
< 93 / 303 >

この作品をシェア

pagetop