強引男子にご用心!

「好きよ?」

呟いたら、

「ぶほっ……」

いきなりビールを吹き出した。

「……だ、大丈夫?」

「っじゃねぇ! お前は何だ! なんなんだ!」

涙目になりながら、鼻を押さえている磯村さんを見て、キッチンから新しいタオルを持ってくる。

「……なんだと言われても困るけれど」

「そういう所が取り扱い注意なんだよ。黙って人の顔を眺めてるかと思ってたら、いきなり初告白とか」

「え? 初だったかしら?」

「好きだなんて言われた事はねぇよ。好きだろって決めつけてたけど」

そうかもしれない。

確かに、私から言葉にして言った事はなかったかな。

それにしても、決めつけられているのもどうなんだろうか。

恨みがこもった視線を受けて、愛想笑いを返す。

「そんなに怒らないで」

「怒ってるわけじゃねぇが、なんてタイミングだよ」

「だって……」

言いたかったんだもの。

唇を尖らせてタオルをいじっていたら、小さく苦笑された。

「タオル、濡らしてきてくれ」

「あ、うん。濡らすの?」

「ビールは放っておくと、ベタベタになんだよ」

そうなんだ?

放っておいたことないしなぁ。

タオルを濡らしてきて渡すと、ビールが吹き飛んだ場所を拭き取る。

それを見ながら、ソファーに戻った。

「……今度の休みにモップかけようか?」

「……モップなんてもってんのか?」

「掃除道具には事欠かないわね」

「まぁ、そうだろうな」

鼻をかんで、少しだけ落ち着いたらしい。

「あー……鼻がムズムズする」

「服に飛ばなくて良かったわね」

「ビールだし、洗えば済む話だろ」

そうね。

洗えばいい。

簡単なお話。


「んで、お前は考え中じゃねぇのか。さっきからやたらと話しかけてくんのな?」

「うん。話したい……んじゃないかな」


たぶん。

首を傾げると、珍妙なものでも見るような視線を返される。

「なんだ。その、他人事的な」

「……そうね。話したいんだけど、話す順番が解らない……感じ?」

「話す順番なぁ? つーか、話すつもりはあるんだ」

「あるわよ。話さないと、貴方納得しないでしょうが」

磯村さんはキョトンとして、それから唇の端が少しだけ上がった。

「よく、解ってるな?」

……そうなのかな?

まだ、磯村さんを理解しているとは思えないけれど。

「私、まわりは見ていないかも知れないけれど、観察はするのよ?」

「そうか?」

「ある程度把握していないと、どんな動きするか解らないから」

「ふうん?」

「それ考えたら、一番不可解な人よね……磯村さんて」
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