強引男子にご用心!

「これ、課長に変更確認印もらっておいてくれるかしら?」

後輩のデスクに使用表を置いて、暇そうな男子社員と視線を合わせる。

「少し手伝って貰える?」

「力仕事ですか?」

「E会議室、今OJT用のままだから、ミーティング使用にして下さい」

「了解です」

E会議室の鍵を持ってドカドカと出ていく後輩をすっと避けてから、笑いを堪えてる様な磯村さんを見上げた。

「まだ何か」

「いや。実にさりげなく避ける」

「邪魔でしょう?」

「……とにかく助かりました。僕は先方にも会議室の変更伝えてきます」

そう言って去る磯村さんに、また眉をしかめる。

内線でも良くない?

最近、何だかよく解らないけれど、些細な事で磯村さんが顔を出す。
それはそれで女子社員がウキウキしているけれど、名指しで無くても良いような事まで名指しされる。

……何だか、遊ばれている気がするんですよね。
遊ばれているとすれば、あまり気分はよくないよね。

磯村さんモテるんだから、他の女の子達と遊べば……

いや、会社で“遊んで”ほしくはないけれど。
せめて人が踏み込まない様な場所で遊んで欲しい所ですが。

どこにでも精力的に“遊ぶ”人っているよね。
大学生の頃も、女の子取っ替え引っ替えの男の子がいたな。

端から見ていただけなのだけど、修羅場は大変そうだった。

渦中には近づかない。
近づくとろくなことがないし、そもそも近づいて欲しくないし。

地味に目立たないように……



って、思っているのに。



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