偶々、
お手洗いへと身体を滑らせ、鏡を除き込む。

「思っていたより酷くない…」

独り呟いて、化粧を直す。崩れてはいなかったが、疲れているようなそんな顔をしている。


そう、これが現実。偶々じゃなくて、気温が低くて寒かったから。

少しでも期待したわたしが間違っていて、声を掛けなかったのは意気地がなかったから。

二人にとって縁があればきっと、連絡先の交換はしていたはずで、それが出来なかったのは…。

これが現実ってやつ。

何も出来なかった自分を否定したくて堪らず溜め息が出る。


鏡を見るのが辛くなって、また目頭が熱くなる。溜め息しか出てこない。

そそくさと事を済ませ席に戻る。依然、田中さんは同じ姿勢で寝続けていた。
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