素顔のマリィ


別れは突然やってきた。

それは、幼いあの日をなぞるように。


その日の放課後、美術室に行くと彼の姿がなかった。

姿どころか、彼の絵も一枚残らず消えていた。

何かの冗談か、はたまたドッキリか。

「ルカ?かくれんぼって歳じゃないでしょ、出てきてよ」

わたしは確か、そんな風に口にした。

「出てきてよ!」

仕舞いには大声で叫んでいた。

でも、わたしの声は広くガランとした美術室に、空虚に響いて吸い込まれていった。


何日か、狂ったように校内を探しまわった。

そうしてわたしは、やっと答えに辿りついた。


そうか、また置いてきぼりにされたのだ、と。


クラスが違うわたしに、彼の転校を知る機会は無かった。

そもそも、流加がわたしに知らせるつもりが無かったのだから仕方ない。

ようやく彼の行き先を知ったのは、わたしが流加を見失ってから一週間ほどたってからだった。


今度はイギリス?

って、マジで?


やはり、今度もわたしは涙ひとつ流さなかった。

だってそうでしょ、まるで夢を見ていたようだった。

まるで手品か魔法で、流加がぱっと現れて、また消えた、みたいな。


そうして、流加とわたしの衝撃の再会は、流加の突然の出国で幕を閉じ、わたしはまた希望を失った。
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