素顔のマリィ
確かに、わたしもこの半年、思うところは沢山あった。
もともと『美術手帳』廃刊が頭にあったから、書店でも図書館でも、どんな客層がこの雑誌を手に取るのかに注視していた。
パイが少なければいくら趣向を凝らしても部数を増やすことは難しいと思っていたし。
案の定、この雑誌を手に取るのは中高年以上、図書館の利用に関して言えば研究者に限られる。
貴重な時代資料としての一面は大事だが、娯楽としての要素もないと購買層を広げるのは難しい。
特集毎の売上げを比較してもみた。
突出してるのは、山地が絶賛してやまないアニメ特集号。
特に、雑誌連載の漫画がアニメ化する時期に合わせた、○○作成秘話とか漫画家訪問みたいな紹介記事。
普通表に出ない漫画家本人が作品について語ったり、初期と現在の原画を比較して見せてくれたり。
アニメ化にあたっての要望や期待、それを作家本人が語るところが『美術手帳』ならではだ。
まぁ、発行部数が少ないし、漫画家自身が昔から密かに愛読している雑誌だったりするわけで。
案外気楽に取材を受けて貰える、というのがあるみたい。
「で、この半年で、坂井くんにも何か感じるとことはあったかな?」
「は?」
ノートに必死に議事録を書こうとペンを走らせていたわたしは、あまりに突然の振りに、呆けた返事をしてしまう。
「何かあれば聞かせて欲しい」
いやいや、僅か入社半年、素人に近いわたしにここで意見を述べる資格があるのかどうか。
「ほら、坂井くん。君が日頃まとめている、あの資料をお見せしてみたらどうだね?」
言いよどんでいると、横から山下さんが助け舟を出してくれた。