クレームの女王
麗華がカートを押した瞬間


外に置きっぱなしで錆びていたカートの車輪が
嫌な音を発して外れてしまったのだ。


バランスを崩してカートを倒す麗華。


カートは祐樹を乗せたまま横転して
そばにあった野菜の棚に突っ込んでしまった。


散乱する野菜。
壊れたカートの車輪がまだキュルキュルと音を立てて回っている。


麗華は一瞬何が起こったのかわからなかった。


目の前の大惨事にただ呆然として
何をしていいのかわからない。


だが次の瞬間麗華は我に返った。


「祐樹!」


野菜の棚に突っ込んでしまったカートの中には
祐樹がのっている。


そのことに気が付き青ざめた麗華は
野菜に埋まったカートを一生懸命立て直そうとする。


やがて飛んできた店員たちや
親切な周りの客たちに助けられ


カートは立て直された。


中に乗っている祐樹は泣き叫んではいたが
大きなけがはしていないようだった。


とにかく祐樹が無事でほっとした麗華。


しかし周りにつぶれた野菜が散乱している様子を見て
ため息をつく麗華。


「弁償って……言われるかな」


冷や汗をかきながら麗華はつぶやいた。

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