優*雪

大和屋 放火

数日後




芹沢が大和屋に火を放った


浪士組が到着する頃

芹沢は屋根に上がっていた


「クソッ! 火消しの邪魔だ!」


かといって芹沢に近づいて、余計に怒らせてはいけない

近藤派は立ち尽くす

すると優太がひょいひょいと屋根に上がり、芹沢の横に並ぶ





「局長は一人でよかろう?」

芹沢が火を見ながら言う

「死ぬ気なら、おともします」

優太が言う


「お主の助けてくれた命を
自ら捨てるわけにはいかぬな
ワッハッハ!!」


鉄扇で豪快に仰ぐ



「鉄扇、まだ持ってたんですね?」


優太に鉄扇を見せる


〝尽忠報国を成す者 芹沢 鴨〟


と刻まれた文字を見て、優太が微笑む






仲間を守るために
冤罪で捕まった芹沢を助けた過去があった

死を覚悟して罪をかぶった

そんな芹沢を鉄扇で殴り
優太が浪士組を作ったら
芹沢がそこに入り、その時に仕返しをする
そんな約束をしていた


「約束は守ったぞ!」

「感謝してます 拳骨痛かったです」


浪士組を作ると、信じてくれていた事に

尽忠報国を掲げてくれたことに

約束を果たしてくれたことに

二度目に芹沢と再会した時は
慶喜と結婚した後、女だということを
隠してくれていることに



芹沢を信頼していた



「降りるかの
お主に会わせたい者がおる
ついてこい」


芹沢と優太は、屋根から降りた


二人の会話は、下にいた近藤派には聞こえなかった



途中、芹沢の大笑いだけが、きこえた



芹沢の後ろを歩く優太が、振り返ると

土方と目が合う


優太は冷たい目線で、早く火を消すように、顎を家に向けた



土方の指示で、すぐに火消し作業がはじめられた




この日から
優太は、司と山崎の部屋を出て


芹沢の隣部屋を使うようになった




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