優*雪

慶喜

芹沢さんがくれたのは…櫛
お梅さんがくれたのは…簪

芹沢さんは、俺が女だと知っているからね

お梅さんは、梅の花が一輪ぶら下がった
かわいい簪
女って、気づいていた? 女の勘かな?


慶喜のところへ戻って、濡れた服を脱いだ

寝間着にきがえようとしたら、俺の部屋に慶喜が入ってきた


昼間の話し合いは

お互い家茂の前で
言えないことばかりだった


気分が悪いからと
人払いをして抜け出していた

今まで、慶喜が俺の部屋に来ることなんて
なかった     こんな日に……



体を隠しながら

「どないしたん?」

「逢いたくなったのだ」

「……」

「なぜ、濡れておる?」

「頭を冷やそうかと…」苦しい言い訳

「優菜、すまなかった
子供に、新選組に嫉妬したのだ」



慶喜から抱きしめられた

「こんなに体を冷やして…」

慶喜が背中を撫でる

あったかい手が、動くたび体がビクッと反応してしまう


「あの…。うちも、ごめんなさい。」

浮気したとは言えないが……謝った

「愛している」

慶喜の言葉に驚いた


慶喜を愛せないばかりか
わがままなお願いばかりして、苦しめて
他の男を愛して、抱かれて…



「そないに思ってもらえるような
女やありません。世継ぎも産めぬのです
……離縁してください」


慶喜が悲しむ表情をはじめて見た


「優菜…。嫌だ。帰ってきてくれ」


慶喜が口づけをしてきた

土方さんと違う、優しくない口づけだった

隠していた服をとられ、荒々しく体を触られて、涙が出た


「いや…。」



呟いてしまった


慶喜は、固まった




ごめんなさい、慶喜

怖かった 体の震えが止まらなかった

「すまん」



慶喜は、俺に服を着せ、朝まで抱きしめてくれていた


慶喜を…これ以上、傷をつけてはいけない



芹沢さんの訃報は昼頃こちらに届いた


慶喜は、何も聞いてこなかった
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