恋愛戦争
安全運転で事務所の専用駐車場に着くまで、俺たちは黙っていた。
「晶、シートベルト」
「うん」
先に降りて晶の方のドアを開けるとちらりと顔を見られる。
「わたしにはやらなくていいよ」
俺渾身のレディーファーストは粉々に打ち砕かれる。
「晶だからやってんの」
「ふーん」
「本当だって」
なんか、浮気疑われてるみたいな気分。
降りたのを確認して晶より先に荷物を持つ。
「あ、ナツいいってば」
「これも、晶だけだから」
「………ごめん、ありがとう」
ごめんじゃねーよ。俺が悪いんだよ。
自覚症状があるにも関わらず謝ることが出来ない俺は晶に車の鍵を渡した。
「晶持ってて、一緒に帰るから」
「え、無くすからやだよ」
「そしたら一緒に電車で帰ろ」
もう両手は塞がったとばかりに晶の荷物を持ち上げれば眉尻を下げて、だけど少し嬉しそうに笑った。
超絶可愛い。
駐車場にあるエレベーターに乗り込んだ晶が振り返る。
「受付って何階?」
「そんなもんいーよ」
「よくないよ、わたし部外者だし」
「俺がいるからいーよ」
「アホナツ」
そんな可愛い顔で言われるなら一生アホナツでいいわ。
それでも一様ルールは守る。と言う彼女に3階を押してもらい受付に到着。専用のプレートをもらい首にかけた彼女はキョロキョロと事務所を見渡す。
「今日どこに来いって言われたの?」
「時間になったらいつも迎えに来てくれるの」
「え、どこで誰が」
「ここに、安藤さんが」
有能なマネージャーが、なぜ。
「特別待遇だな」
「そう?優しいんだよ」
ちげーよお前が可愛いからだよ。