僕と三課と冷徹な天使

朝掃除

僕は総務三課に向かって走っていた。

妄想に苦しめられなかなか寝付けず、
寝坊してしまった。

朝の始業前の掃除を、
コオさんひとりでさせるわけにはいかない。

「・・・おはようございますっ・・・」

ゼーゼーと息切れをしながら、
何とか挨拶をする僕。

「おはよう。
 そんなに急がなくても大丈夫だよ」

とコオさんは笑った。

「落ち着いてからでいいよ。」

まだハアハアと呼吸が整わない僕を
気遣ってくれる。

「はい、ありがとうございます」

なんとか息を整えて返事をする。

最低な妄想男なのにコオさんは優しい。

本当にごめんなさい。

心の中で謝る僕。

そんなことを思っていたら
昨日の妄想を思い出してしまった。

・・・コオさんのベッド・・・

二人きりなのに、なんてことを思うんだ。

雑念を振り切るかのように
掃除機をかける。

すると、いつもより早く下柳課長が来た。

「おはよう~」

「おはようございます」

二人きりじゃなくなって、
ちょっと残念なような気持ちになる。

「いやあ、真面目な灰田君が三課に来てくれて
 よかったねえ~」

とおもむろに下柳課長が言った。

もう配属されてずいぶん立つのに
改めて言われると照れる。

机を拭いていたコオさんも、

「はい。本当に良かったです」

と言ってくれた。

なんだかこそばゆい感じ。
でもすごくうれしい。

妄想男なのに。

せめて
まじめに精一杯仕事をしよう
と心の中で誓った。
< 58 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop