僕と三課と冷徹な天使

よろしく

月曜日、
コオさんはいつもと変わらなかった。

コオさんの家から僕が帰る時も
いつもと変わらなかったんだから
そりゃそうだ、と思う。

変な期待をしてしまったのは
余韻に浸りすぎたせいだ。

ちょっとさみしい気がしつつ、
仕方ないので仕事をする。

こういうとき仕事は便利だ。

他に何も考えなくて済むから。


いつものランチタイムのあと、
屋上に行くと、
何となく森本を探してしまう。

コオさん、キス魔だったよ、
とは言わないけど。

言えるわけないけど。

代わりに坂崎さんが僕のところに来た。

「おとといはごめんね。
 邪魔しちゃって」

爽やかに言う。

「いえ、こちらこそすみません」

何もお構いしませんで、
と言いそうになって
あそこは自分の家じゃないんだったと気づく。

ああ、なんて言えばいいんだろうか。

そんな僕に微笑みながら坂崎さんは

「コオちゃんはさ、意外と弱いところあるから
 支えてあげてね。
 僕の出番はもう無いみたいだから」

とやはり爽やかに言った。

はあ。

確かにコオさんは仕事でミスると、
すごくへこみますけど。

そして僕はすごく褒めますけど。

それが支えだったらいくらでもやります。

・・・って何で坂崎さんがそんなこと言うんだろ?

と思っていると、
坂崎さんは爽やかな風とともに
右手を振りながら去っていった。

見送りながら
僕の出番を待っている人なんて
いるんだろうか、と思って寒気がした。
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