僕と三課と冷徹な天使

翠さん

朝掃除をすませて、
仕事の準備をしていると
知らない女の人が入ってきた。

「失礼します」

めがねをかけたその女の人は
かなりの美人で、
でも清潔感があって
仕事ができそうな感じがした。

・・・どこかで見たことある。

誰だっけ・・・?

とりあえず

「お疲れ様です」

と挨拶を僕がしていると、コオさんが

「あ!どうしたんですか・・・」

と急いで立ち上がって
その人のところに駆け寄った。

「これ昨日・・・」

何か話して渡しているけど
ドアのほうに行って、そのまま
出て行ってしまったので
僕には聞こえなかった。

何だろう?

コオさん、変な感じ。

すると下柳課長が

「おはよう~」

と出社してきた。

「おはようございます」

と挨拶する僕。

「今日はめずらしいお客さんがいたんだね。
 秘書課の翠さん、きれいだねえ~」

と課長がうっとりと言う。

あ、そうか。

さっきの人
社長秘書の女の人だ。

入社式や朝礼で見たことがある。

コオさん知り合いなんだ。

反田部長に電話して
仲良く話してたこともあったし
コオさんみたいなキャラなら
色んな人と知り合いなんだろうなあ。

別に違和感は無かった。

コオさんはすぐ三課に帰ってきたが
何だか落ち着かない様子だ。

「コオさん、
 秘書課の人と知り合いなんですか」

僕は何の気なしに言った。

「え!?・・・あ、そう。
 知り合い、なの」

やっぱり変なコオさん。

思わずじっと見つめてしまう。

なんだろう。変な感じだな・・・

と思っていると、
吉田さんとあっこさんが出社してきた。

挨拶やら、たわいも無い話をしていたら
変なコオさんのことはすっかり忘れてしまった。

このとき、忘れてなかったら
どうだったんだろう。

そんなことはわからないけど、
気づいてあげられていたらなあ、
と思う僕だった。
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