この恋、永遠に。
 シャワーを浴びて身支度を整えてから、私はリビングに戻った。
 彼が用意してくれた服はとても肌触りがよく素敵だった。そして何よりサイズが私にぴったりだ。
 サーモンピンクのベルベット素材のワンピースはマーメイドラインで甘すぎず、裾部分に少しフレアが入っている。大人可愛いといった印象だ。
 今までこういった服は着たことがなかったが、意外にも似合っていて自分でも驚く。

 リビングに行くと、本宮さんはソファに座り分厚い書類をめくっていた。スラックスにシャツといういたってシンプルな服装だったが、彼が着るととても洗練されて見える。
 仕立てのいい服を着ているからというのもあるだろうが、それよりも彼の端正な顔立ちとスマートな身のこなしがそれを際立たせているのだろう。

「あの、シャワー、ありがとうございました。それとこの服も……」

 真剣に書類に目を通す本宮さんにおずおずと声を掛けると、彼ははっとしてこちらを振り向いた。
 私の姿を見とめた瞬間、その顔を柔和に崩す。

「ああ、思ったとおり。とてもよく似合っている」

 ストレートに褒められ、私は気恥ずかしくなった。外見を褒められることには慣れていない。
 手にしていた書類をA4サイズの封筒に戻した本宮さんは、ソファから立ち上がり私を手招きした。その手には私のバッグが握られている。

「はい、これ」

「ありがとうございます」

 渡されたバッグをお礼を言って受け取った。無難なアイボリー色のバッグはこの服でも違和感がなくほっとする。
 私はテーブルの上に無造作に置かれた封筒を眺め、心配になった。さっき起きたときも、彼は書斎らしき部屋で仕事をしていた。この封筒の中身も仕事関係のものに違いない。
 きっと、一流企業の跡取りで専務の彼は、私の想像が及ばないくらい忙しいだろう。今、この瞬間も私のことで時間を割いてもらっていいのか、不安になってしまう。

「あの、本宮さん……」

「うん?」

「…もしかして、ものすごくお忙しいのではないですか?」

 私の心配を察したのだろう。「ああ、これ?」とテーブルの上の書類に目を落とした彼は、すぐに口元を綻ばせた。

「…そうだね。忙しくない、と言ったら嘘になるけれど」

「それじゃあ」

「でも」

 本宮さんが私の腕を掴み、その手を少し引いた。突然のことで私の体は素直に彼の方へと引き寄せられる。気づけば私は彼の腕の中にいた。
 途端に彼の清涼感のある香りが鼻腔をくすぐり、私の鼓動が速まっていく。

「どんなに忙しくても君との時間は作れるよ」

< 29 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop