この恋、永遠に。
医務室の引き出しや戸棚を片っ端から開け、やっと絆創膏を見つけた俺は、やはり医務室など寄らず、最初から沢口に用意させればよかったと少し後悔しながら目的のものを一枚取り出した。普段は殆ど立ち寄らないから、勝手が分からない。
薬箱を片付けたところでドアの外でボソボソと話す声が聞こえた。何やら揉め事のようだ。社員同士で問題でも起きたのだろうか。厄介なことに巻き込まれたくないと思いつつ、専務という立場上、放っておくこともできない。ましてやそこを通らなければ上へ行けないのだから。
俺は溜まった疲れを一緒に吐き出すように大きく息を吐くと、ドアへと近づく。
ガチャリと無機質な音を立てて回るドアノブ。そして、ゆっくり開くドアの向こうに見えたその姿に、俺は自分の目を疑った。驚きでわずかに喉が詰まる。
そこにいたのは、俺の大切な、そしてそこにいるはずのない人物だった。
「……美緒?」
俺の呼びかけに、彼女の体は可哀想な程震えた。ただでさえ色白なその顔は血の気が失せたように蒼ざめ、唇が戦慄いている。声を発することも出来ないようだ。
俺が驚きで目を見開いているのを泣きそうな瞳で見つめ返している。思わず凝視してしまった彼女の姿と、そして次に、彼女の腕を掴み、まるで抱き寄せるように彼女の体を己に引き寄せている男にも視線を移した。
この男は、知っている。営業部で毎月トップの成績を収めている男。確か名前を高科といったはず。
このとき俺は、どうして美緒がここにいるのかということよりも、彼女を抱き寄せようとする男に意識が向かった。その手を放せ、そう言って突き放したい衝動に駆られる。
だが、俺は何とか冷静さを保ち、その衝動を拳を握り締めてぐっと堪える。まだ絆創膏を貼っていない手の甲に血が滲んだ。
高科が、俺と美緒の間に流れる違和感を感じ取り、動揺しているのが分かる。自分が抱き寄せようとしている女が、なぜこの会社の専務である俺と繋がりがあるのだろう、と訝っているのだろう。
彼女が手にしている書類をちらりと見ると、どうやらそれは備品購入申請書らしい。そんな書類を総務に直接持ってくるということは……。
「美緒、君は……」
ここの社員だったのか?俺の質問が口から滑り出す前に、彼女は走り出していた。その小さな手で高科を振り切り、一目散にエントランスへと駆けて行く。彼女の綺麗な長い黒髪が揺れて小さくなって行った。
「美緒!待て!」
ここが会社であることも、目の前に高科がいることも忘れ、俺は彼女を引きとめようと彼女の名前を叫んだ。
「専務、絆創膏はありませんでしたか?」
専務取締役室にあるマホガニーのデスクにブリーフケースを投げ出したまま、俺は脚を投げ出した状態で椅子に深く腰掛け、呆然としていた。
美緒の華奢な背中が震えて小さくなっていく光景が何度もフラッシュバックする。彼女は、この会社の社員だった。
薬箱を片付けたところでドアの外でボソボソと話す声が聞こえた。何やら揉め事のようだ。社員同士で問題でも起きたのだろうか。厄介なことに巻き込まれたくないと思いつつ、専務という立場上、放っておくこともできない。ましてやそこを通らなければ上へ行けないのだから。
俺は溜まった疲れを一緒に吐き出すように大きく息を吐くと、ドアへと近づく。
ガチャリと無機質な音を立てて回るドアノブ。そして、ゆっくり開くドアの向こうに見えたその姿に、俺は自分の目を疑った。驚きでわずかに喉が詰まる。
そこにいたのは、俺の大切な、そしてそこにいるはずのない人物だった。
「……美緒?」
俺の呼びかけに、彼女の体は可哀想な程震えた。ただでさえ色白なその顔は血の気が失せたように蒼ざめ、唇が戦慄いている。声を発することも出来ないようだ。
俺が驚きで目を見開いているのを泣きそうな瞳で見つめ返している。思わず凝視してしまった彼女の姿と、そして次に、彼女の腕を掴み、まるで抱き寄せるように彼女の体を己に引き寄せている男にも視線を移した。
この男は、知っている。営業部で毎月トップの成績を収めている男。確か名前を高科といったはず。
このとき俺は、どうして美緒がここにいるのかということよりも、彼女を抱き寄せようとする男に意識が向かった。その手を放せ、そう言って突き放したい衝動に駆られる。
だが、俺は何とか冷静さを保ち、その衝動を拳を握り締めてぐっと堪える。まだ絆創膏を貼っていない手の甲に血が滲んだ。
高科が、俺と美緒の間に流れる違和感を感じ取り、動揺しているのが分かる。自分が抱き寄せようとしている女が、なぜこの会社の専務である俺と繋がりがあるのだろう、と訝っているのだろう。
彼女が手にしている書類をちらりと見ると、どうやらそれは備品購入申請書らしい。そんな書類を総務に直接持ってくるということは……。
「美緒、君は……」
ここの社員だったのか?俺の質問が口から滑り出す前に、彼女は走り出していた。その小さな手で高科を振り切り、一目散にエントランスへと駆けて行く。彼女の綺麗な長い黒髪が揺れて小さくなって行った。
「美緒!待て!」
ここが会社であることも、目の前に高科がいることも忘れ、俺は彼女を引きとめようと彼女の名前を叫んだ。
「専務、絆創膏はありませんでしたか?」
専務取締役室にあるマホガニーのデスクにブリーフケースを投げ出したまま、俺は脚を投げ出した状態で椅子に深く腰掛け、呆然としていた。
美緒の華奢な背中が震えて小さくなっていく光景が何度もフラッシュバックする。彼女は、この会社の社員だった。