もう一度、あなたと…
「ひかる…」
「エリカ…」

お互いの名前を呼び合った。
気まずそうに顔を背ける彼から、私は目を逸らさなかった。

「私の話…聞いてくれる?」

夢の中だからこそ、話せると思った。
太一との結婚生活で感じたこと…
ひかると暮らしだして感じたこと…
いつか醒めるものなら、今しか話せないと思ったーーー。

ハッとした顔で、ひかるがこっちを向く。
唇を噛み締めたままでいる私に頷く。
聞きたくない話になるのを承知の上で、お互い目を逸らさずにいようと思った。

靴を脱いで部屋へ上がった。
初めてのような感覚を覚えながら、床の感触を確かめて、前に進んだーーーー。
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