もう一度、あなたと…
通りの反対側にある、花屋のバケツを眺めた。
盛夏に差しかかろうとしてる時期に、やはり紫陽花の花はない。

「…大っきなヒマワリですね」

ひかるが面白そうに手に取る。
顔ほどもある大きな花に、興味津々みたいだった。

「すみません…」

店員を呼んで花を指さした。

「彼の持ってるヒマワリと、このミニブーケを一つください」

ブルーとホワイトの涼しいカラーで作られたブーケ。
夏らしい色合いが、ステキだと思った。

大きなヒマワリは、軽くラッピングされ、青いリボンを掛けてもらえた。
お金を支払って振り向き、それを彼の前にかざした。

「今日のお礼。楽しかった!」

驚いた様な顔をする。受け取った花を眺め、こっちを見下ろした。

「ありがとう…ちょっと嬉しいかも…」

意外さがウケたらしい。やはり夢と同じことをして良かった…と、思った時だった。


「…でも、お礼は、俺より杉野さんに言って下さい」


思いもしない言葉に、茫然となった……。

「今日、ここへ誘うように言ったの…杉野さんなんです。病院にお見舞いに行った時、軽く落ち込んでる俺を呼んでーーー」




『…気にするな!』

怒鳴るように言われたらしい。
一瞬ビクついて、殴られるかと心配したそうだ。

『エリカは昔から足先が不器用なんだ。大学時代にも沢に落っこちた事があるし、何もない所ですぐ転ぶし、今回のことだって、それを考えたら仕方ない!』
『で…でも…!骨折したし、足にも傷負って…入院まで……』
『いいじゃないか。たまには骨休めになって。それに入院費だって、大金支払う事には変わりない。いい厄落としになる!』
『厄落とし…?』

…何の事かと思ったそうだ。

『エリカは32才の厄年。あいつは俺に内緒で、あちこちの神社に参ってたくらいだから、丁度いい厄落としだ!』

乾いた様な笑い方をして睨まれた。
入社した時から苦手なタイプだと思ってたけど、悪い人じゃないんだと気づかされた。

『エリカが心配なら、御利益のありそうな神社にでも連れて行ってやれ!俺に遠慮なんかしなくていいから!』

どうせ別れたんだしな…と呟く顔が切なそうだった…と、ひかるは私に話した。
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