今はまだ、このままで。



学校のある駅の改札を抜けて、まだ人のまばらなホームに三人横並びになる。
いつでも梨乃を真ん中に、右に涼二で左に准一。二人が梨乃を守るように並んで立った。


見下ろせば梨乃がいて、顔を上げればそれぞれの思惑が読めるような、互いの顔がよく見える位置。
自分の頭上で激しくも冷ややかな火花が散っていることなど全く気づかない梨乃は、相変わらず体育教師の文句を口にしていた。



ゆっくりとホームに電車が入ってくると、涼二も准一も同じタイミングで梨乃の肘の辺りを掴んだ。
先頭で電車を待つ時に、二人が無意識でやっていることだ。


「あ、また。二人ともビックリするから止めてって言ってるのに」

冬服の時は気にならなかったそれが、夏服に変わって素肌に直に触れられるようになって、突然のそれにドキッとするようになって、梨乃ははじめて気がついた。



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