大切なものはつくらないって言っていたくせに

「いっつも、瀬田さんはそうやって、私の事からかって。そんなに楽しい? 私はいつも本気で相談したりしてるのに。」
遥はプリプリして、ベランダを後にする。
キッチンの洗い場で無言で皿洗いをする遥を後ろから見つめる。
「遥は真面目過ぎるんだよ。もっと自分を開放してみればいい。思わぬところから道が開けるかもしれないっていう意味。」
遥は、布巾で皿を吹く。
「コーヒー飲む?」
「いや、、、、俺はもうちょっと飲みたいな。下のバーに行かないか?」
遥は、肩をすくめて、「お店休んだのに、行けないよ。」
「そうだな。じゃあ、俺一人で行くよ。思ったより元気そうだしな。安心したよ。」
俺は、そう言って、遥の部屋を出た。
遥の弱みに付け込んで、オオカミになってしまっても良かったのに、俺はまた良い兄貴分を装おっていた。
これ以上深入りすると、離れ難くなってしまう。ますます振り回される事になりかねない。
こんな感じで、つかず離れずのなんでも話せる友人でいるのが一番良いのだ。
< 61 / 105 >

この作品をシェア

pagetop