大切なものはつくらないって言っていたくせに
イタリアへ
それから月日は過ぎ、俺自身がスクープされて半年。
仕事で、ローマに行く機会ができた。
あの店はもう無い事はわかっていたが、滞在したホテルで、俺はあのレストランで働いていたスタッフ、ジーンに偶然会うことができた。
フェルは今どこにいるんだ?と聞くと、彼女は、教えてくれた。
「 の横にある三つ星レストラン、知ってる? そこの最上階のレストランのシェフをしてるのよ。しかも、サブチーフまで任されて。」
へえ、、すごいな。。。
俺はそれを聞いて嬉しかった。
「ねえ、フェルに会いたいんだけど、連絡取ってくれないか?」

ジーンは快く引き受けてくれた。
「あなた、そういえば撮影で事故に遭ったって聞いたけど、大丈夫なの?」
「おかげさまで元気だよ。」
「日本で遥に会った?元気かしら?」
俺は、少し躊躇して正直に言う。
「彼女にもう一回会いたいんだ。フェルなら居場所や住所を知っているんじゃないかと思って。」
ジーンは、微妙な顔をして、俺からとっさに目をそらす。
「フェルと遥の事、知らないの?」
「え?」
俺はちょっと面喰らう。
ジーンは、少し考えてから俺の目を見て言う。
「そうね。フェルに会って、ちゃんと話し聞いたら? まだ、ここには滞在してるの?」
「ああ、一週間。」
「私、ここでコンセルジュしているの。部屋にお手紙いれておくわね。それでいい?」
「ありがとう。」
ジーンは、あのレストランで接客をしていた。 今、この高級ホテルで接客業を続けているなら、みんなあの店から大出世して次の新しい場所で活躍しているんだと嬉しくなった。

< 70 / 105 >

この作品をシェア

pagetop