今度こそ、練愛
「仕事には慣れてきた? 前はどんな仕事してたの?」
山中さんが見たことのある笑みを浮かべる。
胸がぞわぞわと疼いて気持ち悪くなってきて、山中さんの顔をまともに見ることができない。目と目を合わせるのが怖くて、顔を見るふりをしながら視線はテーブルへ。
「はい、なんとか慣れてきた感じです、前は設計の仕事をしていました」
「そうなんだ、全然違う職種だけど慌てないでゆっくり覚えたらいいから。わからないことがあったら高杉さんに聞いたらいいよ」
柔らかな声、言葉の節々に、昭仁を演じていた川畑さんを重ねてしまう。
何を考えているんだろう。
川畑さんに対して特別な感情なんてなかったはずなのに。忘れたい過去を知っている人だから、動揺しているだけなのだろうか。
「はい、いつでも聞いてね。私がいない時は岩倉君か仲岡さんがいるから安心して」
はきはきとした高杉さんの声が、狼狽える私に喝を入れるように響いてくる。
しっかりしなくては、私はそんなことで揺らぐような女じゃない。
強く言い聞かせて顔を上げたら山中さんの向こう側から覗く仲岡さんと目が合った。