今度こそ、練愛

店内の花を眺めてはいろいろとイメージしてみるけれど、しっくりこない。



仲岡さんは実際に花を数本ずつ手に取って、店の外から見映えを確認している。だけど納得できるような答えは見つからないらしく、肩を落として店内へと戻ってきた。



「苦戦してるみたいね」



私たちの様子を見ていた高杉さんが、くすっと笑う。



一日経ってもまだイメージすら掴めないなんて、情けなくて恥ずかしい。高杉さんに助けを求めたいけれど、たぶん笑ってかわされるに違いない。



「難しいですよ、お客さんからイメージを教えてもらって作る方が簡単ですよ、イメージも無い状態からなんて……」

「何事も勉強よ、 言われるままに作るだけじゃなくてら自分で考えなきゃ力がつかないの」



高杉さんの言うことは当たってる。自分で考えて実際にやってみなければ、前進なんてあり得ない。指示されて動くだけなら誰でもできるのだから。
まるで先生に諭される学生の気分。



「じゃあ、この店のイメージに拘らずに好きな花とか好きな色から入ってみたら?」



頭を抱える私たちに高杉さんはボソッと言い残して、事務所へと入っていく。軽い足取りだけど、なんとなく逃げていくように見えたのは気のせいじゃない。



きっと私たちの弱音を聞かないように逃げたんだと思う。




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