今度こそ、練愛
好きな花と好きな色、なんて今まで意識したことがなかった。
花を見たら綺麗だとは思うけれど、特別に好きな花なんてない。色だって服装はともかく拘りはないから、好きな色を答えるのは難しい。
「とりあえず明日までに、好きな花と色を考えておこう」
と仲岡さんと約束した。
明日中にはイメージを固めておかなければ、明後日の締め切りに間に合わない。一週間ぐらい期限をくれてもいいのに、山中さんは意地悪なんだろう。
仕事を終えて駅へ向かって通りを歩いていても、ショーウィンドウばかり見てしまう。他の店はどんな風に飾っているのか、少しでも参考にしたい。
さらっと流すように見て歩く中、鮮やかな色彩の服を飾ったブティックが目に飛び込んできた。眩しいほどの照明に照らし出されたショーウィンドウは目がチカチカするほど。 この鮮やかさを店の顔として、イメージとしているのだろう。
『ショーウィンドウは店の顔』と言った山中さんの顔が浮かんだ。山中さんのイメージは……と考えたところで何も浮かんでくるわけない。
諦めかけた脳裏に浮かび上がってきたのは、カフェで待ち合わせた時の川畑さん。
手に持っているのは白いカラー。