今度こそ、練愛

私に気付いた昭仁の顔が、一瞬ほんの僅かに強張ったように見えた。



「おう、おはよう」



軽い口調で答えて、すぐに笑顔を取り戻す。
いつも通りの昭仁だ。



「おはよう、昨日はお疲れ様。大変だったね」



私もいつも通り、笑顔で返した。昭仁の顔からすっと笑みが消えて、隣りにいる木戸先輩が目を丸くする。



「何? 何かあったの?」



興味津々問い掛ける木戸先輩に昭仁が答えられるはずはない。適当に言葉を濁しながら、引き攣った笑いを見せるだけ。



やっぱり、昨日は残業なんてしていないから答えられないんだ。



昭仁が休日出勤して残業しなければならないほど急ぎの業務を抱えていたのが本当なのか、先輩も知っていたはず。



休日前の金曜日、昭仁は何にも言ってなかった。急ぎの仕事があることも、休日出勤することも何にも言ってなかったのに。



日曜日、出勤すると知らされたのは土曜日の夜遅く。いつもなら電話してこないような時間にかけてきて、



『明日出勤することになった、急な仕事が入ったから……』



と、デートをキャンセルされた。






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