今度こそ、練愛
ぼんやりとした頭に浮かんだ考えは耳鳴りと混ざり合って渦巻きながら、どんどん膨らんでいく。辛うじて引き止める気持ちが抑え込んでいるけれど、今にも噴き出しそうなほど危うい。
私が薬を飲むのを見届けて、山中さんがふわっと微笑んだ。
「必要な物があったら電話してくれたら届けるよ、今日はゆっくりと休んで早く治すように、いいね」
「ありがとうございます、今日はすみませんでした」
「気にすることはない、無理はしないようにね」
言い残して、山中さんが帰ろうとする。玄関へと向かう背中を見ながら、私は枕元に置いたスマホへと手を伸ばした。
川畑さんの番号へと発信する。
ぶぅんと振動音が聞こえ始めて、山中さんがポケットからスマホを取り出した。スマホの画面を確認した山中さんの動きが止まる。
「出てください、川畑さん」
掠れた声で呼びかけたけれど、山中さんは動きを止めたまま。私の声が聴こえていないはずはないのに。
山中さんが、ゆっくりと振り向いた。
スマホを耳へと翳しながら、私を見つめる目は冷たくて痛い。あれは一番最初に川畑さんを見た時と同じ目だ。