今度こそ、練愛

「わかる、言いそう……、きっと販売員の子もうんざりしてるはずだよ」

「坂口さんって、店長か何か役職就いてるんですか?」

「ううん、ちゃんと店長はいるんだよ。私よりも十歳ぐらい上の綺麗な人。坂口さんの言うことを忠実に聞く人ね」

「それなら店長に任せておけばいいのに……」

「あの店が彼女の趣味みたいなものだもん、たまに店にも来てるんだよ? 有希ちゃんはまだ見たことなかったんだね」

「はい、幸い……って言うか、展示会の会場で初めて会ってびっくりさせられました」



自分でも怖いぐらい棘のある言葉が出てきて止まらない。いけないとわかっているのだけど、溜まったものをそのままにしておけない。



「よし、私も連れてってもらえるように頼んでみる」



突然、仲岡さんが目を見開いて私の肩を叩いた。



そして私を残したまま、すぐさま高杉さんのところへ。何を思いついたのかと私は興味津々で帰りを待つ。



戻ってきた仲岡さんは満面の笑み。



「やったよ、明日の朝連れてってくれるって、どんな扱い受けてるのか確かめて来なきゃ」

「仲岡さん、しっかり見てきてくださいね。ジュエリーも」

「もちろんよ、ジュエリーも見たかったしね」



ご機嫌になった仲岡さんと一緒に、ショーウィンドウの花の製作を再開し始めた。




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