今度こそ、練愛

どういうことだろう。
不思議に思いつつ、インターホンを鳴らした。



ところが、しばらく待っても答えはない。
駐車場を見ても空っぽで、耳を澄ませてみても家の中に人の気配は感じられない。



花を注文しておいて留守はないだろう。
しかも時間を指定しているのに。



不安を否定しながら、もう一度インターホンを鳴らしてみる。今度こそと期待したけれど、やっぱり返事はない。



家を窺う私は思いきり不審者に思われたのか、隣の家の奥様らしき人が窓から覗いている。目が合うとあからさまに怪訝な顔をされてしまった。



とりあえず、この会社に電話してみよう。
住宅地の中に雨宿りできる場所なんて見当たらない。仕方なく家の玄関の軒下にお邪魔して電話することに。



呼び出し音と降り続く雨音が入り混じって、次第に不安が大きくなっていく。大丈夫と言い聞かせて待っていると、ようやく電話が繫がった。



だけど、第一声から期待外れな年老いた女性の声。



「上西製作所さんですか?」

「え? 違いますけど?」

「すみません、間違えました」



私の問い掛けに気を悪くしたのか、女性は最後まで聞き終えることなく電話を切ってしまった。



どうして? 
疑問と不安が一気にこみ上げてくる。
地図にメモ書きしてきた電話番号を何度確認してみても間違えていないのに。






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