今度こそ、練愛
途方に暮れたまま軒下で雨宿りしていると、隣の家の奥様が門の向こう側に立っている。じっと窺うような目で私を見ていた女性が、門の隙間を潜ってやって来た。
「あなた、この家に御用?」
声をかけてくれたことが単純に嬉しくて、急いで軒下から飛び出した。地図を広げて指し示しながら女性に問い掛ける。
「はい、この家かわからないんですけど……上西製作所さんはこちらですか?」
「違うわよ? ここの家の人たちは夕方にならないと帰って来ないけど、住所間違えてない?」
顔を埋めるように地図に見入っていた女性は首を傾げる。
「上西製作所という会社は、この辺りにありませんか?」
「知らないわね……、この辺りは住宅地でしょ? 会社か工場はもっと駅前に行かないとないと思うんだけど」
そう言いながらも女性は一通り地図を見て探してくれた。だけど結局、お客さんの会社は見つからず。女性にお礼を言って、住宅地を離れて駅前へと向かうことにした。
お客さんに指定された時間はとうに過ぎている。
もう高杉さんと仲岡さんも帰ってきているかもしれない。
早く店に連絡して岩倉君さんにも報告しておかなければと、住宅地を出たバス停の屋根の下へと駆け込んだ。