今度こそ、練愛
事務所に帰った頃には、雨はさらに激しさを増していた。雨で視界が白く染まる中、帰社した私は腕も足元も濡れてしまって悲惨な状態。
でも、出迎えてくれた仲岡さんの顔を見たら安心した。
「悪戯だったかもしれないわ、住所も電話番号も違うし、そんな名前の会社が見つからないの」
高杉さんは大きく息を吐いた。
悪戯にしては悪質過ぎると怒りたいところだけど、悪戯だと断定できた訳でもない。証拠なんてどこにも無いのだから。
「そんな悪戯、あるものなんですか?」
「こんなこと初めてよ。だけど暇な人が居るものね、ごめんね、こんな雨の中行ってもらったのに」
「私は大丈夫です、悪戯かどうかなんてわからないですもんね……」
「そうよね……」
と言って、高杉さんも仲岡さんも首を傾げた。
お客さんを見送った岩倉君が戻ってきて、高杉さんに深く頭を下げる。
「俺もすみませんでした、ちゃんと確認してしたつもりだったんですが……悪戯とはわからなくて」
きゅっと唇を噛んで悔しそうな表情が見えてしまって、私まで悔しくなる。一緒に留守番を任されていたのだから、岩倉君だけの責任ではない。
「私こそ、すみませんでした」
「うん、仕方ないよ。大隈さんには申し訳ないけど気にしないで行こう」
岩倉君と私の肩をぽんっと叩いて、高杉さんは笑ってくれた。