今度こそ、練愛

どこかと探していると、会場の裏手に通じるパーテーションの陰から高杉さんが手招きした。



「開催中に花が枯れたり崩れてきたものが、ここに撤去されたのよ」



高杉さんに見せられたのは無残な姿になった花たち。もう花も抜き取られてしまって、ほとんど葉とベースぐらいしか残っていない。
本当に枯れたり崩れたとはとても思えない。



「酷いですね……、毎日ちゃんと朝夕に水やりと手入れをしてたのに、こんなになるはずないですよね」

「そうなのよね……、ホント頭にくるわ」



高杉さんも怒り心頭。
大きな溜め息を吐いて、台車へと載せていく。



根拠はないけれど、坂口さんを疑わずにはいられない。彼女が意図的に撤去したのかもしれないと思うと、悲しくなってくるし悔しい。
尚更負けたくない気持ちがこみ上げてくる。



だけど、今日は来てなくてよかった。
きっと顔を合わせていたら黙ってはいられなかっただろうから。



撤去した花を車に積み込んで、再び店に戻る。私たちとは別に、自分の車を使った岩倉君が既に荷物を下ろしていた。
岩倉君は私たちの元へと駆け寄ってきて、



「すみません、お先に失礼します」



と言い残して帰ってしまった。



急ぎの用事があったのだろうか。
いつもなら手伝ってくれるのに、不思議な感じだった。










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