今度こそ、練愛

「どうしたの? 何かあった?」


山中さんの怪訝な声が投げかけられる。
早くも気づかれてしまったようだ。私の目を逸らしたタイミングが悪かったかもしれない。



ひとつ息を吐いて、高杉さんが事情を話し始めた。
決して私のミスとは言わない高杉さんの気遣いが胸を締め付ける。申し訳なくて情けなくて、きゅっと唇を噛んだ。



すべて聞き終えた山中さんは、しばらく黙ったまま考え込んでいる。



やっぱり、いい案は見つからないのだろうか。
私は仲岡さんと並んで一歩下がった場所で答えを待つ。



「大丈夫だよ」



耳打ちした仲岡さんが、こっそり手を繋いでくれる。今にも押し潰されそうだった心が、すうっと楽になる。
山中さんが顔を上げた。



「展示会しようか?」

「え? 展示会?」



すかさず高杉さんが聞き返す。仲岡さんと私も驚いたのはもちろん、岩倉君まで目を見開いて唖然とした顔をしている。



「展示即売会がいい、だけど場所が問題だなあ……、ここじゃ無理だし、日にちは無いけどどこか探してみようか」



どうやら山中さんは本気らしい。
ひとりで考えを巡らせて、言葉に出しては私たちに呼び掛ける。



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