今度こそ、練愛

見たくなかった光景が見事にフラッシュバック。



大通りの街路樹を彩るイルミネーションの下、車道を挟んだ向こう側をひと組のカップルが腕を組んで歩いている。ぎゅっと彼の腕にしがみついて笑顔で話しかける彼女、優しく微笑み返す彼。



あの男性と私は、ほんの数分前に電話で話したばかり。



『有希、ごめん……どうしても帰れそうにないんだ』



苦しそうな声で何度も謝った昭仁の声が、今も鮮明に蘇る。



急な残業で帰れなくなったと私に言った彼が、どうして目の前にいるだろう。
彼なら、まだ会社に居るはず。
こんな所に居るはずはない。



本当に昭仁(あきひと)なの?



考えるほどに頭が混乱していく。
突きつけられた現実はあまりにも残酷で、私の頭の中をいっぱいに満たして溢れそう。



本当なら昭仁の隣に居るのは私のはず。
昭仁と一緒に食事をして、あの言葉をもう一度聞けるはずだった。



今日は私の二十八歳の誕生日。
今度こそ真実味を帯びた昭仁からのプロポーズを。






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