今度こそ、練愛
母から届いた荷物の中に、いつもと様子が違う瓶が入っている。
可愛い蓋の見慣れない瓶に入った金柑ジャムが二つ、その傍に三つ並んでいる味気ない市販のジャムの空き瓶に入った金柑ジャムとは明らかに別格。ちゃんとラッピング用の袋まで同梱されている。
さて、どうしようかなあ……
渡したことにして私が消費してもいいけれど、ひとり暮らしの小さな冷蔵庫にこれだけ入れるのは厳しい。かと言って、貰ったものを捨てることなんて私にはできない。
母が昭仁のために作ったというのなら尚更。
昭仁のために用意した瓶、ラッピング用の袋を見ていると胸が痛む。悩んでも溜め息しか出てこない。
手帳に挟んでいた名刺を取り出した。
川畑さんの名前と携帯電話の番号をひとしきり眺めて溜め息。
懇親会の帰りに福沢さんに絡まれていた時以来、川畑さんとは会っていない。車で家まで送ってもらったけど、家の前で下ろしてもらってお礼を言ったきり電話もしていない。
今さら母から頼まれたからと言って、こんな物を渡しても受け取ってくれるだろうか。
それ以前に会ってくれるだろうか。
川畑さんはあくまで仕事として母と会っただけ、私情は挟まないという契約だったから、いくら母が好意を示しても彼は受け止めることはないだろう。