今度こそ、練愛
事務所からの帰り、私は重い足を引きずってショッピングモールへ向かっていた。かなり大きな施設で店舗数が多いから、持て余した時間を潰すには最適。
もしかすると販売系の求人情報があるかもしれないという期待も少し。
それにしても平日の昼間の景色には未だ慣れることができない。休日とは歩いている人の雰囲気だけでなく歩調まで違っているようで歩きづらい。うまく流れに乗れずにふらふらしする。
苛立ちながら赤信号でひと休み。
交差点の対角線上の通りを振り向くと、きらりと輝く店が目に留まった。
交差点の角に店を構える人気の宝石店。
ではなくて隣に似たような白を基調とした比較的新しい店がある。白い壁にオレンジ色の瓦が差し色になった南欧風な雰囲気。
あんな店あったかな?
見覚えのない店に惹かれて、交差点を渡った。
店内を覗いてみると花屋らしい。
誘われるように店内へと足を踏み入れる。整然とした店内には目に鮮やかな色とりどりの花たちが溢れていて、暗い気持ちに光が差し込んでくる。
呼ばれたように振り返った先には白い花。
あれは確か、川畑さんが待ち合わせの時に持っていた花。初めての会った時に持っていた、カラーという名前の花だ。
川畑さんは受け取ってくれるだろうか。
優しい目で見つめてくれた川畑さんを思い出してしまう。