今度こそ、練愛
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
店の奥のカウンターでバスケットに花を活けていた店員さんが、いつの間にか私のすぐ近くまで来ていて明るい声で呼び掛ける。現実に引き戻された私の脳裏からは川畑さんの面影は消えていた。
「この花を、カラーを二本ください」
「カラーですね、プレゼントですか?」
「いいえ、自宅に飾るだけなので……」
「了解いたしました、そちらのテーブルで少々お待ちください」
優しい笑顔で頭を下げた店員さんの胸には、店長と書かれた名札が見えた。この店は店長さんのセンスなのだろうか、自分の店が持てるっていいな。
窓際のテーブル席に着いて、通りを歩く人たちを眺めているといろんな思いが過る。
つい勢いでカラーを買うことになってしまったけれど、部屋のどこに飾ろうか。
私も早く、川畑さんのような彼氏を見つけなきゃ。
その前に就職先を見つけないといけないじゃない。
「お待たせいたしました」
店員さんの手には綺麗な包装紙で包まれたカラー。自宅に飾っておくには勿体ないと思えるほど。
「きれい……ありがとうございます」
受け取ろうと手を伸ばす。
店員さんのずっと後ろのカウンターに貼られたポスターが目に飛び込んだ。