今度こそ、練愛
ふうっと息を吐いた岩倉君の呆れたと言いたげな目が、私を捉えて離さない。まるで私のことを落第だと決めつけるような顔をしている。
反論なんてできるわけがない。
私が悪いのだから。
「いい加減な仕事するの止めてくれよ、大切なお客さんなんだから」
さっきよりもずいぶん穏やかな口調だったけど、私の胸に突き刺さることに変わりない。それ以上は何にも言わず、彼は去っていった。
彼がいなくなったのを見計らって、顔を出していた高杉さんが私の傍へとやって来る。
「大隈さん、大変だったけど、まだまだこれからだから頑張ろうね」
「はい、ご迷惑をおかけしてすみませんでした、急にすごい波だったからびっくりしてしまって」
「たまにあるのよ、さっきみたいに急に波が押し寄せる時が。慣れるまで大変だけど焦らないで、ゆっくり少しずつだよ」
高杉さんの温かい言葉が傷ついた心を癒してくれる。
あんなに言わなくてもいいと思う。
はっきり言って、岩倉君の第一印象は感じの悪い人。
接客も花の知識も完璧なのかもしれないけれど、せめて初対面なのだからもう少し遠慮してくれてもいいのに。自分の方が先輩だという意識とプライドがあるのかもしれないけれど、年上に対する態度ができてない。