鬼部長と偽装恋愛はじめました
「美男美女だろ? みんなの憧れだったな」

その営業さんは、ため息混じりに言っている。

本当……私とは全然違って、ふたりが並んでいる姿は絵になっている。

「でもさ、なんでその人がここにいるんだよ?」

「さあ。わざわざ部長が呼んだんじゃねえの? ウマが合うんだろう」

と聞いたところで、祐平のかけ声がした。

「よーし、ミーティング始めるぞ。静かにして」

それまでざわついていた室内も、シンと静かになっている。

仕事中なんだし、集中しなくちゃ。

そう思うのに、どうしても祐平の隣にいる香坂さんが、気になってしまう。

今回のミーティングは、職種の配置転換の説明で、以前にも会社から発表されている。

事務の仕事から、営業の仕事へ変わったり、その逆もあったりと、働き方に多様性を持たせるのが狙いらしい。

それについての詳細説明が祐平からあり、香坂さんは職種転換におけるメリットやデメリット、さらには生活に影響する内容などをかなり論理的に説明してくれた。
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