四百年の恋
 「長かった。特に肥前名護屋城での戦陣における日々は、この上なく苦痛だった。だが帰郷後、姫と結ばれる日だけを楽しみに、その苦難を乗り越えることができた」


 「冬悟さま」


 「これからはずっと、一緒にいよう。共に過ごそう。間もなく訪れる桜の季節も、眩しい夏も、もの悲しい秋も、凍てつく冬も」


 「はい」


 「この大地の冷涼さも忘れてしまえるくらいに、姫を抱きしめていたい」


 そして二人で、体を寄せ合った。


 冬枯れの木から、気づけば淡い緑の若葉が伸びゆこうとしていた。


 ……出会って間もなく一年。


 偶然出会ったあの宴の夜から、まさかこんな幸せな未来が待っているとは。


 姫は予想だにしなかった。


 冬悟もまた、退屈な毎日がこのような輝かしいものになろうとは、夢にも思っていなかった。


 それが今、こうして……。


 互いのぬくもりを感じ合い、甘い時を過ごせているなんて、幸せすぎて信じられないくらい。


 二人の人生において、まさに一番幸せな季節だった。 
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