四百年の恋
 「年齢は……21」


 福山が答えた。


 染み入るような、落ち着いた声だった。


 「えっ、21?」


 静香は驚いた。


 「誕生日を迎えて? それとももう誕生日過ぎたの?」


 それによって、同学年かもしくは一学年先輩かが判明する。


 「え、正月を迎えて……? いや、そう、皆さんと同じ年」


 少し間を置いて、福山は答えた。


 「なーんだ。同い年か。じゃ敬語やめるね」


 急に敬語からタメ口に変わった。


 「福山くんは函館の人? それともどっか違う地方から?」


 「出身は松前で、」


 松前。


 真姫はドキンとした。


 名前のみならず、出身地までも……。


 「……その後、家の都合で松前を離れて、最近こっちに戻ってきたんだ。今は函館の郊外に住んでいる」


 「そっか、高校はこっちじゃないんだ」


 静香は質問を続けた。


 「どうして私たちと同い年の福山くんが、聴講生やってるの?」


 「家の都合で、大学に進学できなくて。でもどうしてもやりたいことがあって、聴講生として大学に入れてもらったんだ」


 「え、お前大学行ってないの?」


 突然圭介が会話に割り込んできた。


 その言葉には若干、侮蔑の念が含まれていた。
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