四百年の恋
 「謀反……!」


 次の日の朝、目覚めて身支度を整えていた月姫に侍女が告げたのは。


 福山冬悟が謀反を起こし、それを鎮圧するために冬雅が急いで福山城に戻ったという噂。


 「まさか。どうして冬悟さまが……」


 考えれば考えるほど混乱した。


 姫は真相を突き止めるために、叔父の元へと急いだ。


 「叔父上っ!」


 姫は叔父の宿舎に飛び込む。


 「どういうことなのです。冬悟さまが謀反? なぜ……」


 「私もよく分からない。さっきそんな情報が飛び込んできて驚いている」


 「……」


 叔父の周囲にも、正確な情報は届いていなかった。


 「叔父上、馬を貸してください」


 「馬を? 何をする気だ」


 「私も福山城へ戻ります」


 「なっ、まさか一人で?」


 「何が起こっているのか、この目で確かめてきます!」


 姫は叔父から強引に馬を借りて、その背に飛び乗り、福山城へと至る長い道のりを駆け出した。
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