四百年の恋
 ……その後福山冬雅は、人が変わったように慈悲深い君主になったという。


 不要な権力拡張政策は途絶え、ひたすら領内の繁栄に心を配り、後の福山家の発展に尽力した。


 福山城下は江戸期を通じて、代々蝦夷地の玄関口として発展を続けた。


 明治維新の際の戊辰戦争において、戦渦に巻き込まれることはあったもの、福山城は焼失を免れた。


 明治期に福山家の当主は、東京に移住して爵位を授かった。


 残された福山城は一時期荒廃が進んだが、戦後この地に現れたGHQの連中がその素晴らしさに感動し、文部省に保全と改修を訴えたという。


 その甲斐あって、福山城は築城から四百年を経ても、この地に姿を留めることができた。
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