四百年の恋
 因縁薄からぬ真姫は圭介と共に、前日から福山城下に入っていた。


 「慰霊祭は午前11時から。10時前にこの部屋を出て、花屋に寄ってそのまま会場へ向かおう」


 「車で行って大丈夫なの?」


 「無限に広い駐車場がある」


 ……福山冬悟が、この世から消えた今でもなお。


 圭介は目に見えない敵に追われているような不安を払拭できずにいた。


 そして真姫が冬悟の後を追うように消えてしまうような恐怖にも、未だ囚われ続けた。


 それが怖くて、圭介はますます真姫に執着していった。


 「真姫、愛してる」


 「……もう百万回目だけど」


 「じゃあこれが、百一万回目か」


 「そういうことかもね」


 苦笑する圭介に対し、腕の中の真姫はいたずらっぽく笑った。


 福山との再会、そして永遠の別れ。


 あのような過酷な体験をして、しばらく真姫は打ちひしがれた表情が多かったけど、最近ようやく笑顔が増えてきたような気がする。


 以前にも増して、満ち足りた日々が続いていた。


 だがそれは、圭介をむしろ不安にしていた。


 真姫がそばにいてくれるのは過去を断ち切ったからではなく、開き直っているだけなのかもしれない。


 それとも絶望して、何もかもあきらめ切っているのかも?
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