四百年の恋
 場内にて新たに発見された当時の史料(真姫が発見者)や、これまで見過ごされていた文献を再考察することによって、歴史の中に埋もれていた福山冬悟の生涯とその最期が次々と明らかになっていった。


 これまでは、「第三代当主・福山冬雅の末の弟」「将来を嘱望されていたが、二十歳すぎで夭折」程度しか判っていなかった。


 だがこの度、閉ざされていた歴史の扉は開かれた。


 絶世の美女(という設定になってしまった)「月光姫」を巡る、兄と弟の争い。


 関が原の戦いの際、豊臣方に付くか、徳川方に付くかの争いも拍車をかけた。


 福山家の行く末を案じてのことか、単に邪魔者を排除して冬雅に気に入られようとしたのかは謎だが。


 赤江という腹心が、冬雅に冬悟の謀反を密告した。


 それにより冬悟は、切腹に処せられ、四百年にわたって「薄墨」の木の根元で眠っていた。


 ……そのように研究成果がまとまり、冬悟の謀反は陥れられたのが原因という可能性が高まったため。


 冬悟の遺骨を発掘し、学術調査を終えた今、改めて福山家代々の墓地に埋葬されることとなった。


 歴代当主とその家族、そして家臣たち。


 その脇に新たに墓を準備して、冬悟は四百年ぶりに福山城に還れることとなった。


 改葬に際し慰霊祭を執り行うこととなり、あちこちから出席者が訪れた。


 地元の人たち。


 東京在住の福山家の末裔。


 学術関係者。


 それらに混ざって、真姫たちの研究室の面々も参列することになったのだ。
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