四百年の恋

未明

***


 夜の眠りから覚め、朝を迎える頃。


 夢と現実の狭間で混濁した意識の中、真姫の温もりを求めた。


 夜明け前の寒さで、冷たくなったベッド。


 腕を伸ばし、真姫を探す。


 明け方はいつも不安だ。


 愛する人が忽然と消えているような気がして、怖くなる。


 「真姫……」


 伸ばした指先が、真姫の背中に触れた。


 安心すると同時に、その体を引き寄せ抱きしめる。


 腕の中に閉じ込めると心が満たされる。


 不安が消える。


 髪を撫で、首筋にキスをする。


 深い眠りの底から連れ戻したくて、向きを変え唇を重ねる。


 再びその体が、昨夜のような熱を帯び始め……。


 体を重ねようと起き上がった、その時だった。


 腕が空を切る。


 そして目覚める。


 夜明けの静けさの中、何もかもが明らかになった。


 広いベッドの上、一人きり。


 「……」


 この18年間、幾度となく同じ夢に惑わされてきた。


 甘い夢ほど、目覚めた時のベッドの冷たさと孤独とが増してせつなくなる。
< 316 / 618 >

この作品をシェア

pagetop