四百年の恋
 「じゃその女の人は、死んじゃったの?」


 美月姫は息を飲んだ。


 「一足先に天国に旅立った、前世からの許婚の後を追って自殺したんだって」


 「……」


 一同、一瞬沈黙が走った。


 「だけど本当なの? 前世とかそういうの」


 美月姫はつぶやいた。


 「先生の恋人は前世、福山城の若君の婚約者だったお姫様だったって話だよ」


 「福山城?」


 美月姫は一つ、思い出したことがあった。


 吉野先生が歴史の授業中に、福山城の歴史に言及した際、ちらっとその話をしたことがあった。


 確か「月光姫」という名前だったか。


 福山家第三代当主の福山冬雅が、弟から奪い取った美しい姫の話。


 その際弟を陥れ、自害に追いやったという。


 「……いずれにしても先生は、亡くなった恋人を忘れることができず、未だ独身ってわけなのね」


 一同、しみじみ話を噛みしめていた。


 「そう、それから18年もの間、先生は亡き恋人を想い続けているんだって」


 「18年!?」


 美月姫には衝撃的だった。


 18年といえば、自分が生まれる前からの話。


 理解不能なくらいに長い長い時間。


 その遥かなる時を経て、一人の女性を想い続けるなんて……。


 「私には、分からない」


 美月姫は本音を口にした。


 初恋もまだな彼女には、人を愛し続ける強さなど理解しようもない。


 「だけどロマンティックじゃない? そこまで深く誰かを愛せるなんて」


 「羨ましい。私もそこまで愛されてみたいな」


 友人たちは無邪気に話し合っていた。
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