四百年の恋
 「ふ、福山くんは、どんな仕事をしているの?」


 「俺?」


 「大学の授業を聴講しながら、働いているんでしょ。両立なんて大変ね」


 「そうでもないよ」


 「勤務時間が不規則な仕事なの? 職場は大学に通うのを認めてくれるの?」


 「まあね……」


 ……のらりくらりかわしながら。


 結局福山は自分の仕事を、明確には話してくれなかった。


 あやしい……。


 あまり人には言えないような、仕事なのかも。


 昼間はちょくちょくこうやって、大学に出てくる時間があるってことは?


 (まさか、夜の仕事?)


 この、澄んだ泉のような雰囲気を持った福山が、夜の仕事つまり水商売系をしているとは、真姫は到底思えなかった。


 結局謎のままだった。


 「……花里さん、お団子好きなの?」


 「えっ?」


 「それ、大事そうに食べているから」


 定食のデザートに、白玉が付いていた。


 「うん。歯ごたえが何ともいえなくて」


 「あの頃と変わらないね」


 そう言って福山はくすくす笑う。


 「あの頃?」


 よく意味が分からなかったけど、からかわれているわけではなさそうだ。


 気がついたら緊張感はなくなっていたものの。


 真姫にとって福山がどことなく、ミステリアスな雰囲気をまとった存在であるということに変化はなかった。
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